bellwoの中国留学日記

中国政府奨学金で留学した記録です(2018.9-2019.7)

自称「30年」のウイスキー

淘宝(タオバオamazonのようなもの)で物品を購入する実績を解除しました。

物品が私の手元に到着するまでには結構驚きのシステムを経由するのですが、その話は後日。

 

さてその淘宝、さすがに何でも揃っています。

目下必要な生活家電や雑貨を注文がてら、ウイスキーマニア(と書いて半可通)の私は中国本土のウイスキー事情やいかにと検索してみます。病気。

するとなんとも中国らしい、怪しい商品があるではありませんか。

以下がそのカタログスペック(自称)。

 

・「jw藍牌」(ジョニーウォーカーブルーラベル?)のブレンド用に買い付けられたシングルモルトの樽からのカスクストレングス。

・樽の出所はスペイサイドの「manster工場」。現在はディアジオ傘下の工場とのこと。

シェリカスクで15年の熟成の後バーボンバレルに詰め替えられ、故あって現在まで15年間「中国の福建省で」保管されていた、合計30年物。

・温暖な保管環境のため、カスクストレングスながら42-43度程度まで度数落ち。

・ラベル無し。明らかに正規のボトリングを経ていない。

・容量約600ml。値段は4000円程度。繰り返すが30年物。

 

どうです、このスペック。

ウイスキーについて知っている人ほどわくわくしてくるでしょう。

興味のない方のために何がおかしいかを説明しますと

 

・「30年もの・600ml・樽出し原酒のシングルモルト」であれば安く見積もっても5万は下らないのが現在の相場。

ジョニーウォーカーの原酒として買い付けられた樽が、なぜ15年もの間中国の福建で保管されていたのか?

・「ディアジオ傘下のmanster工場」に関する情報がネット上にも絶無。

・以上の来歴を担保する表示がボトルに一切ない。何ならウイスキーですらない色水の可能性すらある。

 

大陸の広さを感じるヤバさですよね。あまりにも怪しい。怪しいが、好奇心には勝てず。

まあ一昔前ならいざ知らず、今なら飲んで死ぬようなものも売ってないだろう……ということでさほど悩まずに注文、

めでたく本日開栓となったわけです。

 

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サランラップの上にテープが巻かれている。こんな未開栓のボトルみたことない。

 

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しかしスクリューキャップは開栓が確認できるタイプのもの。実はきちんとボトリングされている?

 

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ってそこから外れるんかーい。

 

 

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色は薄い。

 

 

香りは意外にもシェリカスクらしいチョコレート様のニュアンスと、カヴァランに通ずる南国フルーツの淡い香り。

もしかしてイケるやつなのか。口に含む……。

 

口に含むとスパイシーな刺激が舌に広がる。穀物の甘みとチョコレート。わずかに酸味。

フィニッシュはビター。

 

ウイスキーらしい味はするが、度数に対して刺激が強い。

さらに度数落ちの影響か、口に含んだ後の展開に不満が残る。

三十年ものに期待する風格があるかといわれれば、やはりそうは言えない。

 

これがちゃんとしたウイスキーなのか呑んでみた今もちょっと謎ですが、これがもし本当に三十年樽に入っていたシングルカスクウイスキーだとするなら、ウイスキーづくりにとって熟成環境やブレンド技術といった要素がいかに動かしがたい作用をもたらすものであるかを垣間みる思いがします。

おそらく適切な環境で保管されていれば、そしてブレンド用原酒のひとつとしてその他の原酒とともに用意されていたなら、この原酒にもふさわしい持ち場があったのでしょう。

 

ウイスキー(と中国)の奥深さを知る上で大変勉強になりました。