【背景推理 翻訳】写真家
翻訳・解釈の原案や引用に利用される際は当記事の URL を添えた上でその旨を明記してください。
※ネタバレ注意
※日本語版公開前の私訳です。実装される日本語訳と齟齬がある可能性があります。
※同キャラクターの人物紹介とも内容の連関があるのではないかと思います。
1. 逆流
试图回到过去总是困难重重。
1. 逆流
過去へ帰ろうとする試みは、いつも困難に満ちている。
破损的剪报:来自国王 … 从主权者和他的臣民之间相互信任与互惠之爱出发,应尽快为国家的弊病提供有效的补救方法 … 确保公众的幸福,使我们重新感受到长期被剥削的平静与安宁。全国等级会议将于 … 宫举行。
破れたスクラップ:国王 … から …… 主権者と彼の臣民の間の相互の信任及び互恵の愛の立場から、可及的速やかに国家の疲弊を救う有効な対策を打ち出し …… 公衆の幸福を確保し、長きに渡り損なわれてきた平穏と安寧を改めて手に入れなければならない。全国レベルの会議が … 宮で行われる。
2. 变革
他们嚎叫着,手里的火把照亮了天空。
2. 変革
彼らは吠えていた。手にした松明は空をも焦がしていた。
日记1:我们都很喜欢冬天的壁炉,火焰明亮又温暖。可当它在街道上肆虐时,我们才意识到,那些生活中常见的东西,能够变成另一种面貌。
日記1:我々は冬の暖炉の、明明と暖かいあの炎を愛する。しかし同じ炎が街中を陵辱するとき、我々はようやく気づくのだ。日々親しんだありふれたそれこれが、我々が知るのとはまるで別の顔を持ちうるのだということに。
3. 回忆
最令人惶恐的,是忘却和损毁。
3. 追憶
最も人を恐れさせるのは、忘却と毀損だ。
破损的肖像画:一对双胞胎兄弟站在年轻夫妻中间,面带微笑。
傷んだ肖像画:一組の双子の兄弟が年若の夫婦の間に立ち、微笑みを浮かべている。
4. 流亡
我们因人民的意志来到这里,我们只会被刺刀驱逐而离去。
4. 亡命
我々は人々の意志によってここにたどり着いた。我々はサーベルに追われてただ立ち去るしかなかった。
日记2:克劳德咳嗽得越来越厉害,他几乎睡不着觉。父亲说,再等一个月,只要一个月,我们就到了。
日記2:クロードの咳はひどくなる一方で、彼はほとんど眠れていない。父は、あと一ヶ月保ってくれ、あと一ヶ月で辿り着くから、と言うけれど。
5. 失去
我想要他回来。
5. 喪失
彼に戻ってきてほしい。
完整的肖像画:一位青年站在中年夫妻中间,面无表情。
無傷の肖像画:一人の青年が中年の夫婦の間に立っている。その顔に表情はない。
6. 暗箱*1
它能将箱外的景色投射到箱内,形成颠倒且两边相反的奇妙影像。
6. 暗箱
その箱は外部の風景を内部に投射し、上下左右の顛倒した奇妙な像を映し出す。
日记3:美丽但稍纵即逝,再精妙的画技也无法完美再现暗箱里的景象,也许这就是人的极限吧。作为活物,我们生长、衰老,患病,最后腐朽。克劳德,我的末路,与你相差无几。
日記3:美しさとはしかし儚いもの、どれほど精緻な筆致を以てしても暗箱の中の風景を余すことなく再現することはできない。定命の身の悲しさよ、我々は育ち、老い、患い、そして滅ぶ。クロードよ、私の最後も、お前と何も変わりはしないのだ。
7. 流言
“不知道” 比 “糟糕” 要可怕得多。
7. 流言
「未知」は、既知の「悲惨」よりずっと恐ろしいものなのだろう。
日记4:帮佣和工人们最近变得很奇怪,似乎在私下谈论什么东西,生病告假的人越来越多。因为手脚不控制地颤抖,没有他人的帮助,试验只能暂时搁置。克劳德,我已经察觉到衰老的来临。
日記4:最近下働きたちの様子がおかしい。どうやら密かに何か話し合っているようで、病を理由に暇乞いをするものが増える一方だ。手足が抑えられないほどに震えるのだ、人の助けがないとなっては、実験は暫し取りやめにせざるを得ない。クロード、私も老いの訪れを感じているよ。
8. 蚀刻*2
光,是最好的画笔。
8. 食刻
光、それが最高の絵筆だ。
残破的实验记录:… 硝酸银可以用氯化银替代,将平涂氯化银的纸张放置于暗箱中持续 … 模糊 … 沥青 …
朽ち果てた実験記録: …… 硝酸銀は塩化銀で代替できる。塩化銀を塗布した紙を暗箱の中に置き、…… しつづけ …… ぼんやりと …… 瀝青を……
9. 显影*3
这让那些肉眼看不清的东西变得一览无遗。
9. 現像
肉眼でははっきりとしないものも、これで立ち所に看て取れる。
残破的实验记录:… 水银蒸汽的蒸熏效果出乎意料,普通工人也能胜任 …
朽ち果てた実験記録:…… 水銀蒸気の燻蒸効果は予想以上だ。これなら並の労働者にも果たしうる仕事だ ……
10.恐惧
它使我们疯狂。
10. 恐怖
それが我々を狂わせる。
破碎的剪报:… 约瑟夫・德拉索恩斯 .. 失踪.工人与帮佣宣称宅邸受到失踪老人的诅咒。
細切れのスクラップ:… ジョゼフ・デソルニエーズ …… 失踪。下働きたちは邸宅は失踪した老人の呪いがかかっていると口々に言い募っている。
*1:暗箱については
暗箱はピンホールカメラと同様の原理を持つ装置だが、
「画家がこの箱の中に入り、壁に紙を貼り、映っている像を描き移すことで、実際の光景とそっくりの下絵をつくるという使い方がされた。」 |
というから、相当な大きさのものだったようだ。歴史については、
「カメラ・オブスクラを広く知らしめたのはイタリアの物理学者ジャンバッティスタ・デッラ・ポルタである。1558年に著書『自然魔術』を出版しその中で絵を描く時の補助に役立つ器具として推奨し、この本がよく売れて重版しヨーロッパ各国語に翻訳されたため、……(略)」 |
「18世紀頃までに、ロバート・ボイルやロバート・フックらの研究開発により持参できる小型のカメラが生産された。こうした小型カメラ・オブスクラは、旅行先のスケッチをしようとするアマチュアの絵画愛好家らによって利用されたが、ポール・サンドビー、カナレット、ジョシュア・レノルズといったプロの画家たちも利用し、ロンドンのサイエンス・ミュージアムにこうした画家が使ったとされるカメラが展示されている。 |
とのこと。ちなみにいわゆるフランス革命は1789年から1799年の出来事である。
*2:蝕刻とは食刻、エッチング(etching)のこと。金属板などの任意の部分を化学反応により腐食させ、任意の形状を得る技術。しかし暗箱や写真機とどのような関係があるのだろうか。写真の現像にかかる化学反応をも中国語では蝕刻と呼ぶのだろうか?
*3:銀塩写真のしくみについては荘司隆一「銀塩写真のしくみ」(『化学と教育』62巻4号 192-193 2014年)が簡潔。しかしこれは近代的なフィルムカメラの現像法であることに留意すべきである。水銀で燻蒸するという方法は、こちらの表の左上に記載される「ダゲレオタイプ」と呼ばれる、現像文化の草創期に存在した方法であるらしい。